約4年前に千代田区で路上喫煙が禁止され罰金が科せられることになりました。肩身が狭くなりはじめた頃でした。その頃、私は1日2箱(40本)以上のマルボロメンソールライトを吸っていました。いわゆるチェーンスモーカーです。タバコは心の安らぎだと思っていました。思い出はすべてタバコと共にあるように思えました。タバコは自分のライフスタイルそのものだと思っていました。風邪をひいてもタバコは吸い続けました。ところがある日突然、こんなことを考えはじめました。空港でタバコが吸える場所を一生懸命探していた時のことです。
「俺はタバコに支配されているのではないか?」
「俺はタバコに洗脳されているのではないか?」
「洗脳?」
本当にタバコは安らぎなのか?タバコを吸わない人は安らいでいないかのか?タバコを吸っていなければ、思い出の日はなかったのか?タバコをやめると思い出は錆びてしまうのか?タバコは本当に自分のライフスタイルなのか?俺はタバコに支配されているのではないか!?
禁煙しました。
そしてわかりました。やはりタバコに洗脳されていました。
それが証拠に禁煙を開始したとたんに、タバコを吸うことを正当化する考えが嵐のように襲ってきました。
「仕事の効率が下がってるぞ、仕事に影響してどうするんだ、とりあえず1本吸っとけ」
「来週は韓国からお客さんが来るぞ、しかも愛煙家だぞどうするつもりだ、禁煙は再来週からだ」
「禁煙がストレスになって体を壊した、という話を聞いたことがあるぞ、ストレスを感じるような禁煙はすぐにやめた方がいいぞ」
「急にやめるのは体に悪いらしいぞ、まずは節煙からはじめるべきだ、まずは1日1箱にしたらどうだ」
こんな考えが次から次に浮かんでくるのです。おそらく喫煙者は毎日、タバコを正当化する言葉が頭の中に取り込まれ続け、それが禁煙と同時に蘇る仕組みになっているのではないか??そんなことを考えました。
私はますますタバコの「支配」を自覚しました。そしてこの誘惑を乗り切ることができました。
「タバコに支配されていない人生は最高です」
1日40本以上の元ヘビースモーカーが言うのだから間違いありません。
喫煙者の方はいいます。止めようと思ったらいつでも止められる。俺はニコチン依存症でも何でもないから。別に止める理由もないし、止めるつもりもない。タバコが500円になったら止めてもいい。タバコに火はつけるけどほとんど吸ってない。気休めみたいなもんだよ。
私がそうでした。でも本当にそうですか?
タバコをやめることによる寂しさや、人生のたいせつな時間を失ってしまう喪失感は、禁煙の成功と同時にまったく消えてなくなります。そんなものはまったくありません。心配ありません。安心して禁煙してください。
禁煙の先にあるのは完全な自由です。タバコが吸える場所を探しまわる自分から、タバコが吸いたくてイライラする自分から、誰かの視線から、完全に解放されるのです。
タバコを吸わなくても眠くなんてなりません。
タバコを吸う1分間よりも、体を動かす1分間の方が、仕事の効率を上げられます。よほど気分転換ができます。
イライラすることもありません。イライラするのはタバコを中断するからです。
朝、1本のタバコと同じように、1杯のミネラルウォーターで目は醒めます。しかも、さわやかな気分で。
タバコを吸って10のアイディアが浮かぶならば、タバコをやめてもソファに寝転がるだけで20のアイディアが浮かびます。
食後の一服なんてなくても、食事の満足感に変わりはありません。むしろ食事そのものの余韻を楽しむことができます。
自由になりませんか?ストレスから開放されませんか?自分の中の弱みを消去してゆくことで、人はストレスから解放されます。強くなれます。