社運を掛けたプロジェクトは失敗する!?①

2007/09/23 18:53:42

よく「社運を掛けたプロジェクト」という言葉を耳にします。実際には本当に社運が掛かっている訳ではないことが多いのですが、心意気としてこう表現することが多くあります。優秀な社員がプロジェクトメンバーとして招集され、重役や社長が初回のプロジェクト会議に参加して、メンバーを叱咤激励します。「期待している」「君たちは優秀だ」「君たちに掛かっている」「何としても成功させてほしい」「会社としても失敗はゆるされない」「必要経費はできるかぎり認める」こんなことを言われれば、メンバーのモチベーションはあがりますよね。

 さてあなたが経営者だとしてこのアプローチは正しいと思いますか?
「経営トップ自らがプロジェクトメンバーを招集して叱咤激励を行う」
YESかNOか?

 

しかしこの答えはNO!です。絶対に。

こんなスタートで始動したプロジェクトはとても成功しにくいのです。
答えは簡単です。

この方法でモチベーションがあがるのは良くて数日です。優秀な社員ならなおさら感も鋭いでしょうから、いきなりモチベーションをさげる結果となります。なぜならこの日が評価の頂点になってしまうからです。こんな叱咤激励をされたら社員はこう考えますよ。「やばい失敗はゆるされないんだ」と。

 

このプロジェクトはここから先は、完全に出来てあたりまえ、成功してあたりまえ、失敗したらどんなに失望させてしまうか、そんな恐怖心すら生まれます。この状態では小さな成果をあげても、喜びあえる訳ではなく、常に失敗の恐怖に追いかけられながらプロジェクトを進めることになります。

やがてこのプレッシャーはリーダーから正しい判断力を奪います。特に潤沢な経費は人から思考を奪います。費用対効果の悪い投資を行いはじめます。必ず。そして何よりも怖いのは、軌道修正や撤退の判断は100%できなくなります。このままでは絶対に成功できないとメンバー達が気付き始めても、誰もそれを指摘することはありません。失敗の奈落の底に向かって全員で迷走をはじめるのです。
「いまさらやめられない」「いまさら引き返せない」「いまさらそんなこと言えない」やがてチームは失敗を最小限に食い止めることだけに奔走しはじめます。敗走のはじまりです。

少し極端な例かもしれませんが、大きな組織でこうした現象は発生しがちです。

 みなさんは正常性バイアス又は多数派同調バイアスという言葉をご存知ですか?

 こんな実験をしてみます。10名の人を何かの理由をつけて同じ部屋に入れます。しかし実は9名の人は実験の本当の理由を知っています。仕掛け人なのです。何も知らない人は1名だけです。この1名が被験者です。やがて部屋に煙を入れていきます。部屋は煙で満たされていきます。あきらかに緊急事態です。しかし9名の仕掛け人は平然としています。被験者はどうするでしょうか?被験者はあたりを気にしますが、決して騒いだり、逃げ出したりしません。これが正常性バイアス、多数派同調バイアスです。

 同じことがプロジェクトではよく発生します。誰も騒いでいない。だからこのままでも大丈夫だと。大きなプロジェクトではとても危険です。そしてよく起きることです。「このままではたいへんなことになる。でも誰も騒いでいない、だから誰かがわかって、何とかしているんだろう」と。無責任とは少しちがう心理的な罠なのです。

 

 話を戻しますがプロジェクトはどのような形で開始するのがいいのでしょうか?実は答えは簡単です。

 誰も期待を掛けていないふりをして開始するのです。但し、プロジェクトリーダーと経営者が完全なスクラムを組む必要があります。こうすればプロジェクトは絶対に成功します。

 これからこのブログで具体的な方法をお話してゆきましょう。